ある大手金融サービス会社(以下、「同社」)は、800万人を超える顧客の機密データ、機密記録、高頻度取引の保護および高頻度監視に重点を置いています。また、強力なAIガバナンスにも取り組んでいます。同社は、データガバナンス基準の遵守とAIの説明可能性の強化に加え、すべてのデータ資産に対するコンプライアンスチェックを毎日実施して、市場操作の防止、リスクの評価、顧客の金融資産搾取の予防に努めています。
同社のコンプライアンスチームは、毎日数百万件に及ぶ金融取引から口座レベルの潜在的リスクの指標を特定、予測するために、多数の機械学習(ML)モデルを展開して本番稼働させています。これらのモデルは125人以上の現地監理エージェントを支援し、毎時、日次、月次のコンプライアンスチェックに活用されています。
コンプライアンスモデルの効率的展開を妨げる障害
同社では、2022年にDataikuを導入する以前は、デスクトップベースの複数のオープンソースソリューションを利用していました。全般的にガバナンスが欠如していた上、一元的な展開とパフォーマンス監視が難しく、次のようなさまざまな課題によって、これらのモデルのメンテナンスは煩雑で非効率になっていました。
- 本番稼働まで非常に長い時間がかかる(平均8か月):さまざまなソースシステムのデータを活用する複雑なオープンソースモデルのコードを最適化してモデルを展開するためには、技術サポートエンジニアによる標準展開作業に約1,440時間が必要
- 投資効果(ROI)が低い:MLモデルの展開に要する時間を考えると、コンプライアンスMLモデルから継続的な価値を生み出すのは困難
- 厳密さに欠ける:コンプライアンスモデルがデスクトップのオープンソースソリューションに配備されているため、MLOpsチームが、バージョン管理や、エンドツーエンドの継続的インテグレーションと継続的デプロイメント(CI/CD)で自動化されたMLパイプライン構築のために、アジャイルとDevOpsの方法論を十分に活用できなかった
- コラボレーションができない:デスクトップソリューションで構築されたモデルでは、データサイエンティストとMLエンジニアの間で部門横断的なプロジェクトコラボレーションを推進することが困難
また、デスクトップソリューションに存在するモデルのみでは導入できないタイプのモデルもありました。例えば、モデル出力内で検出されたしきい値レベルや変化率に基づいて特定のアクションを実行するように設計された条件付きパイプラインなどです。
Dataikuを活用したアジャイルなモデル展開とAIガバナンス強化
同社は2022年春にMLOpsチームを結成しました。このチームの目的は、データサイエンティストと協力し、さまざまな部門横断型部門と連携して、MLモデル本番稼働化のエンドツーエンドの展開プロセスをサポートすることです。