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ENEOSマテリアル: 予測モデリングによる素材革新の推進

ENEOSマテリアルは、機械学習を活用してタイヤ材料の配合プロセスを革新し、業務効率の向上を実現しています。

数か月から数日へ

顧客への提案を作成する時間

 

ENEOSマテリアルは、ゴムおよびエラストマーの研究、開発、製造における世界的リーダーとして、タイヤに使用される高性能ゴム材料の開発のみならず、顧客の要望に合わせた最適な材料配合の提案を行っています。

タイヤのゴム配合物は多種多様な材料から構成されるため、その配合プロセスは非常に複雑であり、長年の経験に基づく知見が重要となります。

しかし、最適なソリューションの探索に時間がかかるため、迅速な顧客対応が難しく、製品販売や採用機会の逸失が課題となっていました。

ENEOSマテリアルは顧客要件に即応できるような配合を提案するためのソリューションを必要としていました。

的確な配合計画で顧客ニーズに応える

ENEOSマテリアルの目標は、研究者の経験に依存せず、誰でも高精度な配合計画を提案できるシステムを設計することでした。また、組織内の複数のチームが容易に利用できるユーザーフレンドリーなシステムが求められていました。データ専門チームが不足している中、研究開発部門が自らシステム開発に取り組む必要がありました。

ENEOSマテリアルは、Dataikuとの連携により、多くの基盤課題を解決することができました。

  • 初期のデータセットは、欠損値やスキーマの不一致といった問題を抱えており、直接的な機械学習モデルの構築には適していませんでした。そこで、Dataikuのツールと柔軟なビジュアルレシピを活用し、依存関係の視覚化とデータ前処理を実施することで、機械学習に適したデータセットを容易に構築できるようになりました。
  • Dataiku上で利用可能な機械学習アルゴリズムや説明可能なAI機能を用い、モデルパフォーマンスの多角的な解釈が可能となり、コードを書かずに配合情報から配合物特性を予測する最適なモデルを開発。これにより、複雑な配合プロセスに対する理解が深まりました。
  • DataikuでのコラボレーションやPythonレシピの活用により、多様なアルゴリズムと制約条件を検証。従来の経験に頼らず、多岐にわたる実現可能な配合条件を提案するアルゴリズムを開発し、従来にはない革新的な配合提案が実現しました。
  • ユーザーフレンドリーなUI構築には、Dataikuのシナリオアプリケーションを活用しました。その設計においては、現場でよく使われる用語や、用途に合わせた最適な配合計画など、ユーザーによるインプットが取り入れられました。

現在、ENEOSマテリアルは強力なデータサイエンス基盤をもとに、機械学習やAIの応用範囲をさらに拡大するため、さまざまなユースケースに取り組んでいます。

業務効率の向上と生産機会の増加

独自の機械学習ソリューション導入以降、データ前処理、分析、計画策定といった手作業が自動化され、業務効率が向上しました。データの準備や分析にかかる時間が大幅に短縮され、研究者は付加価値の高い業務に専念できるようになりました。さらにDevOpsを活用したモデル更新により、現場での運用が円滑に進んでいます。

今後、顧客への提案スピードが大幅に向上し、従来は数か月を要していたプロセスが、わずか数日にまで短縮される見込みです 足立 拓海 氏 ENEOSマテリアル 主査

具体的には、以下の2点で価値が生み出されています。

  1. 評価作業の削減: 研究者は短時間で結果を得ることが可能となり、開発プロセス全体の効率が向上します。従来は評価プロセスに数週間を要していたものが、数日で完了するため、リソースを効果的に使用できます。また、チームが他のより重要なビジネス上の取り組みに集中できるようになります。
  2. 迅速な顧客対応と製品への採用機会の拡大: 迅速な顧客対応が鍵となるケースにおいて、提案から採用までのスピードアップにより、売上増加に繋がる可能性が高まります。
Dataikuは、その豊富な機能と使いやすいインターフェースにより、計り知れない価値を提供しています 市林 拓 氏 ENEOSマテリアル GM

ENEOSマテリアルのチームは、Dataikuの活用により、課題を克服しただけでなく、組織内にデータサイエンスのスキルを持つシチズンデータサイエンティストを育成することにも成功しました。初心者でも簡単にデータ分析や予測モデリングに取り組むことができ、Dataiku Academyでのスキルアップが図られています。必要な際には、Dataikuのテクニカルサポートが迅速に問題解決を支援し、業務の遅延を防いでいます。

ENEOSマテリアルの機械学習およびAIへの取り組みは、シンプルな実装であっても、業界の複雑な課題解決に寄与できることを示しています。Dataikuとの連携により、継続的なイノベーションが促進され、配合プロセスの合理化と業務効率の向上を実現し、チーム全体がデータサイエンスの恩恵を享受できる環境が整いました。