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Airline Pilot Club:AI技術でパイロット育成訓練を改革

Airline Pilot Clubは、Dataikuを利用してパイロットの育成プロセスを改革し、パーソナライズされた効率的な訓練を提供するとともに、法規制の要件を満たすソリューションを実現しています。

12.5%

Dataiku上のAmelia.2によって事務処理の時間が減少

22.5%

Dataiku上のAmelia.2によって業務効率が向上

25%

Dataiku上のAmelia.2によって人材マッチングの精度が向上

 

世界的なパイロット不足や、新人パイロットの育成コストの高騰に加えて、急速な技術進化に伴い、迅速かつ継続的な訓練を行う必要性が高まったことで、航空業界はパイロットの育成訓練プロセスの見直しを迫られています。

航空業界が長年採用しているEvidence-Based Training(EBT)およびCompetency-Based Training and Assessment(CBTA)の制度は、現代的なデータドリブンのパイロット育成訓練の必要性をよく示しています。これらの手法は、パーソナライズされたシナリオベースの訓練を通じて操縦技術の向上を図るものですが、航空会社や航空学校が現場のプロセスとして導入するには、高いハードルがあります。

航空業界の課題を新技術で解決

従来のパイロット育成訓練は、厳格なカリキュラムを基盤とするもので、現代の航空業界の変化する需要を満たすのは困難でした。EBTとCBTAはデータドリブン型のパーソナライズされたアプローチを提唱していますが、多くの航空訓練機関は、リアルタイムデータを効果的に分析してアクションに反映するためのツールを持っていませんでした。訓練データは膨大で、その種類もフライトシミュレーター、教官評価、実飛行パフォーマンスなど多岐にわたるため、処理は複雑化し、インサイトの断片化や効率低下につながっていました。

こうした課題を認識していたAirline Pilot Club(APC)は、パイロット育成訓練の改革に乗り出しました。APCが目指したのは、AIを活用したスケーラブルなソリューションです。訓練プロセスを合理化し、意思決定を支援し、航空規制に準拠しながら、高水準で費用効果の高い訓練を提供することが目標でした。

Dataikuを利用して、AIシステム「Amelia」を構築

APCの改革の中心になったのは、Ameliaと呼ばれるスケーラブルなAIシステムです。このシステムはDataikuを基盤とし、さまざまなソースから集まるパイロット訓練データをAIで処理します。さらに開発チームは、生成AIと機械学習を取り入れて、カスタマイズされたレポートの作成や、リアルタイムのKPIモニタリング、即時のフィードバック提供を実現し、パイロットの育成訓練を大幅に効率化するとともに、航空会社や航空学校に大きな柔軟性をもたらしました。APCはこの取り組みによって、EBTとCBTAの基準を満たしつつ、パーソナライズされた訓練ソリューションを提供できるようになりました。

この改革で大きな役割を果たしたのが、Dataikuです。Dataikuの柔軟性と幅広い機能、そしてガバナンスとコンプライアンスを追求する姿勢は、航空業界の厳格な要件にぴったりでした。APCは、DataikuのパートナーであるDigitalShiftであるDigitalShiftの支援を受けて、わずか5か月でAmeliaを開発、稼働開始しました。

DataikuによるPythonとRの開発支援のおかげで、独自のソリューションを短期間で構築できました。視覚的なインターフェースを使って、モデルの開発、テスト、評価を効率よく実施できたので、開発サイクルが短く済みました。 Cedric Paillard氏 APC、COO

このシステムには、Dataikuのさまざまな機能やツールが使われています。

  • 大量のドキュメント処理を効率化するために、テキスト分析プラグインを利用
  • 自然言語での指示を理解するために、Dataiku LLMメッシュを通じて大規模言語モデル(LLM)を利用
  • 複雑なデータタスクを効率よく処理するために、定型的なシナリオを採用
  • 航空関連の法規制に従うために、ガバナンス、説明可能性、GDPRコンプライアンスに関する組み込み機能を活用

同システムの最新版、Amelia.2がリリースされたことで、APCの運営環境は大きく変わりました。

  • 手動プロセスの自動化:パーソナライズされたエビデンスベースの訓練レポートの作成など、それまで膨大な時間をかけて手動で行っていた処理を、AIシステムで自動化。これにより、事務作業の負担が12.5%軽減し、戦略立案や顧客エンゲージメントにかけられる時間が増加。
  • データ連携の強化:さまざまなソースから収集される断片的なデータセットをAmeliaがすばやく整理統合し、一元化された正確なインサイトを提供。これにより、航空会社や航空学校に正確なフィードバックを提供できるようになり、業務効率が22.5%向上。
  • パーソナライズされた訓練課程:AIドリブンのインサイトにより、パイロットのコンピテンシーをリアルタイムで追跡し、能力に応じた訓練課程を提供できるように。パーソナライズを適用した結果、人材マッチングの精度が25%アップし、パイロットの技能開発の成果が向上。
  • 法規制への準拠:Dataikuに組み込まれている、ガバナンスや説明可能性を高める機能を通じて、連邦航空局(FAA)や欧州連合航空安全局(EASA)などの航空規定に対するコンプライアンスを確保。コンプライアンスリスクが最小限になることで、APCの顧客関係にもプラスの効果が。

成功事例:アビアンカ航空の人材採用プロジェクト

Ameliaの目覚ましい成果の1つが、アビアンカ航空の副操縦士採用プロジェクトです。APCは、アビアンカ航空の人材採用プロセスの合理化にSymbioticsと共同で取り組み、Ameliaを利用して、50のデータポイントで1,800人の候補者を評価しました。このAIドリブンのプラットフォームにより、採用マッチングの精度が25%向上し、エアバスA320型式訓練コースに180人の候補者を推薦することができました。

このプロジェクトは、Ameliaが業務効率化に役立つことを証明しただけでなく、スケーラブルでデータドリブンなソリューションを提供できることの裏付けになりました。APCは6か月にわたり、要件を満たす候補者毎月30人推薦することで、業界のイノベーターとしての評価を高めました。

この成功により、APCは財務上のROIを得ただけでなく、業界イノベーターとしての地位を確かなものにすることができました。Dataikuのスケーラビリティのおかげで、この取り組みを世界に展開し、AIドリブンの人材採用とコンピテンシーベースの訓練を航空業界に広げることが可能になっています。 Cedric Paillard氏 APC、COO

APCはDataikuを利用して、人材の育成と採用をシームレスにつなげ、連携したソリューションを構築することができました。大きなデータセットを効率的に処理する機能と、パーソナライズされた訓練レポート、適応型のアプローチを組み合わせることで、パイロットにとっても訓練機関にとっても望ましい結果が得られています。

APCは、訓練データと人材採用データの両方を1つのプラットフォームで管理することで、業務を合理化し、時間の節約や、リソースの最適化、コンプライアンス確保を実現しています。この総合的アプローチは、AIドリブンの航空ソリューションを牽引するAPCの立場を確固たるものとし、パイロット育成訓練の今後の発展と成長を支えます。

今後の取り組み

APCのビジョンは、さらに大きく広がっています。Ameliaを航空会社の訓練プログラムと連携させて、リアルタイムのフィードバックや継続的なコンピテンシーモニタリングを提供することを計画しています。Amelia.2がアビアンカ航空のプロジェクトで成功を収めたことで、航空業界の人材育成・採用に対する取り組みは大きく変化すると考えられます。APCは、Dataikuという信頼できるパートナーと共に、パイロット育成訓練のさらなる改革を追求しながら、航空業界にイノベーションと卓越性の新たな基準を打ち立てようとしています。

動画を視る
Airline Pilot ClubのCOO、Cedric Paillard氏が、Everyday AI Toronto 2024のパネルセッション「Whose Future Is It?」で自社の事例を語った動画